今年も残すところ本日のみ。
2017年もあっという間の1年でした。
1年の最後に、今年の取り組みなどを振り返ってみたいと思います。
長くなりますが、ひとつお付き合いを。
◆2017年のスタートは、笠置峠の古墳の報告書作成でした。
300頁の大部で愛媛大学考古学研究室の先生方、OB・OGに執筆していただき、校正などで何度も何度も文章をチェックする日々が続きました。
おかげさまで、各所へ配布させていただいた報告書は好評でした。
発行部数が限られており、多くの方から購入の希望があったにも関わらずお応えすることができずご迷惑をおかけいたしました。
何らかの方法で、報告書をご覧いただけるように考えていきたいと思います。
◆報告書と併せ、笠置峠古墳出土の土器・土製品の複製を、千葉県の戸村正己さんに製作していただきました。
どうしても実物資料は破片ですので、実際の大きさなどが分かりにくいという難点があります。
一方で笠置峠古墳の報告書では、墳丘上での飲食を伴う葬送儀礼が明らかにされ、土器や土製品の重要性が高まりました。
そのため複製品を製作していただき、出来るだけ多くの人に古墳の上での人間の営為を理解していただくことといたしました。
◆7月には、笠置峠古墳報告書刊行記念シンポジウムを開催しました。
愛媛大学下條名誉教授、村上教授、京都府与謝野町教育委員会の加藤晴彦氏と西予市教委職員で、笠置峠古墳の特徴、今後の活用方法などについて報告・議論しました。
また、新発見の前期前方後円墳についても報告させていただきました。
市役所ロビーでは、笠置峠古墳出土資料に加え、松山市朝日谷2号墳、今治市大西町妙見山古墳、広島市弘住3号墳、山陽小野田市長光寺山古墳、福岡県苅田町石塚山古墳、京都府与謝野町明石大師山A8号墳の出土資料をお借りし、展示させていただきました。
◆9月~11月には、今治市の大西藤山歴史資料館で「妙見山古墳と笠置峠古墳」と題した比較展を開催していただいたほか、2018(平成30)年1月17日(水)~2月19日(月)まで愛媛大学ミュージアム(松山市文京町)で展示を開催していただく予定です。
東・中・南予すべてで笠置峠に関する展示をしていただくということで大変光栄です。
お世話になりました皆様に改めてお礼申し上げます。
◆少し戻って6月には笠置峠古墳の傍の笠置峠を越える峠道を国の指定にするよう文化審議会の答申があり、10月に指定となりました(指定名称「八幡浜街道笠置峠越」)。
地元の皆さんが地道に歴史を掘り起こすとともに、丁寧に守り続けて来られた成果です。
意外にも、西予市では第1号の史跡指定ということになりますが、今後とも積極的に活用を図っていきたいと思います。
10月末に予定していた駅からウォークでその魅力をさっそくお伝えしたかったところですが、台風の影響でかなわなかったのが残念。
それでも、ジオガイドの皆さんに街道も含め内容を勉強していただいているところですし、地元の公民館でのウォーキングイベントを年明けの3月に企画していただいているところで、大勢の皆さんにこの地を訪れていただきたいと思います。
市役所の同僚には、笠置峠を越えた侍によるマラソン大会が藩政期に行われていたという新聞記事を教えていただきました。
こうした新しい情報を含め、多くの方に古墳や街道や地域の魅力を新年もお伝えしていきたいと思います。
◆弥生時代の器を載せる器である「器台」の県指定をうけ、愛媛県歴史文化博物館で「大型器台とその時代」というテーマ展示が行われています。
当市の坪栗遺跡出土の器台なども貸し出しております。
展示は年明け2月25日まで行われていますので、ぜひご覧ください。
◆西予市出身の人形浄瑠璃文楽人形遣いの荻野恒利さん(芸名・吉田和生)がいわゆる人間国宝に認定されました。
市内の文楽関係者のみならず、大勢の皆さん、西予市の子どもたちに大きな夢と希望を与える出来事でした。
12月には市内で講演も行われ、文楽の魅力やむずかしさを知ることができました。
◆西予市明浜町狩浜の文化的景観調査も佳境を迎え、報告書の取りまとめの段階に入っています。
当課では石造物の調査を進め、近世墓の調査もさせていただきました。
今年度中には調査報告書が刊行される予定です。
2月には国の文化審議会の皆さんが現地を訪れ、色々とご意見を頂戴しました。
また6月には、徳島文理大学の清水真一先生に、地元の春日神社の建造物としての特徴やその価値についてご講演いただきました。
年末には保存計画などについて地元協議会との意見交換を行い、年明けからは議論が本格化していくことになります。
◆明浜と言えば、岩井の石灰窯という市内でも最古と考えられている石灰窯で試掘調査を行い、その構造の一端を確認することができました。
◆歴史文化講演会では、1月に秋吉台科学博物館の村上崇史さんに四国カルストとその地下に広がる洞窟について、同じく1月に関西外国語大学の佐古和枝さんには遺跡の楽しみ方を、2月には養蚕に関する歴史を西予市文化財保護審議会の岡崎直司さんと、工学院大学の二村悟さんに学び、西予市宇和町西山田の公会堂(稚蚕施設)を見学させていただきました。
3月には全日本かるた協会名誉専任読手の和家寛治さんに、かるたの魅力や歴史について学び、参加者の皆さんには実際に競技かるたにチャレンジしていただきました。
年度があけて8月には、9月から開催される国体を前に、日本相撲連盟の櫟原利明さんに「相撲の歴史」についてお話しいただきました。
西予市野村町は相撲の盛んな町で、そもそも相撲自体が国技と呼ばれていますが、意外と知らないことがたくさんあることに気付かされました。
◆四国霊場第43番札所の明石寺において、愛媛県教育委員会による札所調査が引き続き進められました。
様々な面から調査が進められていて多くの成果が上がっているようです。
どのような成果が報告されるか、今から楽しみです。
◆12月には、ジオパークの再認定が決定しました。
事前に行われた現地審査では、審査員皆さんと意見交換させていただきました。
まだまだ課題も多く、文化財とジオの連携を深める必要があります。
◆これも当課担当ではないのですが、卯之町の町並みでは、防災計画にも着手するようになりました。
町並み保存という、町を面的に文化財として守る取り組みのなかで重要な事ですが、ここまで来るにはなかなか大変だったと思います。
◆そのほかここに書ききれない動きも色々とありましたし、今年は国体という大きなイベントもありました。
ここ数年で痛感しているのは、少子高齢化や人口減少により、地域の皆さんが文化財を守ることがなかなか大変な時代になってきたということです。
文化財の活用に向けて国の制度改正や補助の見直しなどが進められていますが、今こそ文化財をどう保護するかということも考える必要がありそうです。
一方で松野町のように遺跡の本質を活かした活用に取り組んでいるところが身近にあり、私たちも見習って、遺跡の活用などを進めていきたいと思います。
12月には民具のクリーニングや仮置きしていた施設からの移動も行いました。
市内に数多くある文化財を今後どうやって保管していくか、市内の文化施設の収容能力も限界を迎えているなか、対応が求められています。
◆一年間ご支援ご協力いただきました皆さん、本当にありがとうございました。
どうぞ、良いお年をお迎えください。